古谷実の作品では珍しくハッピーエンド
ヒミズ以降の古谷実の作品は必ず作中で人が死ぬ。
主人公が直接手を下す場合もあるが、ほとんどは無関係なのに悪質な事件に巻き込まれていって平和な日常が壊れていくというもので非常に理不尽だ。
「人に迷惑をかけるクズや犯罪を犯してしまうような人間は死んだほうがいい。」
古谷実の作品からはそういった思想が感じられる。
と、同時に恋人や家族と平和に暮らしたいというような日常を愛する人…こんな印象もある。
古谷実のヒミズという漫画で主人公は「俺は誰にも迷惑をかけない。だから誰も俺に迷惑をかけるな。」と願うシーンがあるが、これが全てなのではと思う。
ヒミズ以降の作品は主人公に突然、可愛い彼女ができ、主人公とは関係ないところで犯罪が起き、理不尽にも巻き込まれていくが事態は収束。
最後は自ら死んだり彼女とは結局別れたりバッドエンドが多い。
わにとかげきずも主人公の周りの人間が犯罪に巻き込まれてかなり死んだり、そのせいで気に入っていた仕事を辞める事になり無職になり、挙げ句の果てには見ず知らずのホームレスの借金の肩代わりをしたり…という感じで最悪の展開になっていくが可愛い彼女とはかなり順調で将来結婚も意識している。
でもなんだかんだ別れるだろうと思っていたらなんと彼女が小説家デビューし主人公を養いながら一緒に暮らしている。
しかも彼女にとって主人公は運命の人なので養うのも全然苦ではなく、仕事も順調で妊娠までして順風満帆というオチで珍しくハッピーエンドだった。
古谷実といえば稲中卓球部やヒミズ、最近だとヒメアノ〜ルなどが話題になったが、私はこのわにとかげきずが好きだ。
なんというかちょうどいい。
実際にあり得るのではないかという恐怖と幸せな日常が同居しているわりと珍しい作品なのではと思う。