珠玉の社会派サスペンス
この映画はアメリカの元国土安全保障特別捜査官ティム・バラードが、国際的性犯罪の犠牲となった少年、少女を救い出す実話をもとに作られました。児童誘拐、人身売買、小児性愛等がテーマになっている為、見ていて自分がつらくなるのではないか、見た後に負の感情が残って落ち込んだりしてしまうのではないか心配でした。が、そのような場面は示唆的な表現になっていました。ホッとした思いもある一方で被害に遭っている子供たちの恐怖、苦しみ、家族の悲しみを思うと胸が痛くなります。
実話がもとになっていますが重々しいドキュメンタリー映画でもなく、ヒーロー物でもありません。むしろ、困難な救出作戦を成し遂げた主人公は最後にもっと讃えられたり感謝されるべきなのではと思ったくらいです。また救出された女の子が父親と弟に再会するシーンも、もっと喜んでいいのにと感動的な演出を期待して物足りなさを感じました。
コロンビア7北部の港町・カタルヘナの海岸、島、都市の街並や山間部ジャングルの中の川をボートで進む景色は美しかったです。女の子の歌声、合唱、子供たちが手をたたくリズムが耳に残りました。「子供は神の子、売り物ではない」の歌詞が印象的です。姉弟は救出された、でも、これでハッピーエンドではない…この物足りなさは現実社会につながっている、まだ実際に被害に遭っている子供たちがいることに気づかされます。社会派エンタメとして映画館で集中して見る価値ある作品だと思います。