映画『バジーノイズ』は好きの偉大さを教えてくれる
映画『バジーノイズ』は、音楽だけを愛し、日々孤独の中曲を作り続ける青年・清澄(きよすみ)と彼のバイト先をきっかけにして出会った少女、潮(うしお)をメインの登場人物とした物語である。
この映画の特筆すべき点は、視覚に訴えてくる美しい色彩と、若者の絶妙な精神的もがきを描写している点である。この映画の監督はドラマ『silent』を制作した風間太樹監督であり、彼の手による青々しい情景描写は、映画との親和性が実に高い。また、若者特有の悩み、葛藤も見事に表されている。他人と関わることで自分が傷つくのを恐れているため、友達をもたず常に孤独の中で作業をしている主人公・清澄の姿は多くの若者に通ずるところがあるだろう。全てを自己完結させて、他人と喜びを共有しない清澄だったが、ヒロインの潮がその壁を壊し外の世界に清澄を連れ出していく。その潮の姿は、若者にしかとれない、素直で思い切った行動である。若者というのは、世界の広さを知らず他人とのコミュニケーションが上手くいかない時期であると同時に、何か思いたった瞬間に思い切った決断をして前に大きく踏み出すことができる時期でもある。そんな「弱さ」と「正直」さを併せ持った美しい時期の貴重さを改めて感じさせてくれる、『バジーノイズ』はそんな映画である。