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DVをテーマにした奥の深い作品でした
SMという特殊性癖がテーマの漫画かと思いきや、奥にはDV被害に苦しみ、回復しようともがく人間模様が垣間見えるのが面白いと感じました。父親の暴力から幼い弟を守るため奮闘する女子高生のハレカが主人公。そんな彼女がSMの女王様として成り上がっていくという物語です。母親はとうの昔に自分ひとりで逃げ出しており、弟を守るのは自分しかいません。高校生であることの無力感がひしひしと伝わってきます。また、父親の妹である叔母も幼少期から兄による暴力を受けていたため、結婚相手にもDV癖のある男を夫に。夫がガンで死ぬまで、暴力に怯えて生きていました。しかし、夫亡き後は兄の支配から逃げることができません。被害者でもあるのに、ハレカの監視役をするなど、加害者としての一面も見せます。長年の暴力のせいで自尊心が傷つき、依存心が強く、今は息子のシュウだけが心の支え。シュウはそんな母親の弱さを見抜いており、どちらかというと軽蔑しています。そんなシュウにもDVの片鱗が見え隠れし、傷つくシーンがあります。DVとは、こんなにも人間の心に大きな影を落とすのかと感じさせられる作品でした。ハレカはSMを通してその暴力の連鎖を断ち切っていきます。彼女の強さの根源とは何なのか、今後も見逃せない作品となっています。