式の前日

式の前日

『式の前日』とは穂積の漫画作品。著者のデビューコミックスにて最高傑作と名高い。双子の兄弟、ワケありの親子、結婚をひかえた男と女。“ふたりきり”という情景を温かく、鮮やかに切り取った珠玉の短編よみきり集となっている。『このマンガがすごい!オンナ編』第2位、『このマンガを読め!』第5位、「全国書店員が選んだおすすめコミック」第12位にランクインし、第4回ブクログ大賞のマンガ部門大賞を受賞した。

式の前日のレビュー・評価・感想

式の前日
10

世界で一番優しく寂しい「ふたりきり」

2013年「この漫画がスゴイ! オンナ編」で第2位に輝いた本作。7作を収録した短編集で、登場人物それぞれの人間ドラマが描かれています。
読み切って胸をよぎるのは「ふたりきり」という5文字。この漫画にはいろいろな形の「ふたりきり」が詰まっていて、どこか物寂しく、それでも温かい気持ちになれる1冊でした。
たとえば表題作でもある第1話目「式の前日」のあらすじをざっと解説してみると、結婚式を翌日に控えた男女がふざけあって話をして、ともに食卓を囲み、手を繋いで眠ってその日を終える、というどこにでもあるような、ごくごくありふれた様子が描かれています。ですが、最後にこの男女の関係性のすべてが明かされたとき、きっと読んでいる人は「そう来たか!」と驚き、そしてあまりの美しさに胸がいっぱいになることは間違いないのではないかと思います。
このふたりについては最終話に後日談も用意されているので、ぜひ合わせて読んでみていただきたいです。
短編漫画でありながら、それぞれの物語でとても長い映画を見たような深い余韻が残りますし、とてもやさしい読後感を味わうことができると思います。
「このマンガがスゴイ! オンナ編」で選出されている漫画ですが、男性の方にも自信をもっておすすめできる1冊です。