ついにB級を超えた!?新時代のハイクオリティサメ映画
舞台はフランス・パリ。ランドマークでもあるセーヌ川で行われる大規模なトライアスロン大会を控える中、5メートルを超える巨大な人喰いザメが突如出没。人々を大混乱に陥れる。海洋生物であるはずのサメがなぜセーヌ川に現れたのか。人間に打つ手はあるのか。そして、トライアスロン大会の行く末とは。サメたちの侵略が、水面下で静かにはじまる。
古くは「ジョーズ」をはじめとし、「サメ映画」というものは一定の需要があり、愛され続けている映画ジャンルのひとつである。そうはいっても、主にマニア向けのB級もしくはZ級レベルの低予算サメ映画ばかりが量産される中、しっかりと予算を投入した高クオリティのサメ映画のヒットは、2018年の「MEG ザ・モンスター」以来ではないだろうか。Netflixの配信初週から世界中で再生され、視聴ランキングTOP10入りを果たしたのだから、これは快挙ともいえる。
サメの恐ろしさを訴える専門家や警察の意見を聞かず、金儲けのことしか頭にない政治家たちのせいで大事件が勃発する、という構図は昔からの定番パターンだが、ただのモンスターパニック映画ではない部分にも面白さがある。エゴにまみれた環境活動家たちの身勝手な言動や、オリンピックでも話題になったセーヌ川の水質汚染問題など、実際に起きている問題にも嫌味たっぷりに警鐘を鳴らしていく。
一頭のサメの登場を皮切りに、バカな人間たちの愚かな行動のせいで信じられないくらいの量の人がバタバタと死んでいく様子は、見ていてもはや清々しい。
後半戦にかけて、ギャグとしか思えないシーンが続出するが、それなりの演出とCG技術と劇半のおかげで、チープにはならないのが素晴らしいところだ。「普通そうはならんだろ!」とツッコみたくなるシーン多数でも、なんとなく許せてしまうのが本作の魅力である。
サメのため、国のためと言いながら自分のことしか考えていない人間たちには、きっちりサメたちが制裁を加えてくれるのもスッキリポイント。最後の顛末は今までのサメ映画にはないパターンで驚くが、アイロニーたっぷりで魅力的なエンディングだった。
サメ映画が気になるけどハズレを引きたくない人、なんとなく最近スッキリできていない人、モンスターパニックものがシンプルに好きな人、ぜひ鑑賞をおすすめしたい。ツッコミながら楽しみたい人は、ぜひ恋人や友人と一緒にどうぞ。