正欲(映画)

正欲(映画)

『正欲』とは朝井リョウによる心理フィクション小説、およびそれを原作とした岸善幸による実写映画作品。原作は2021年に朝井リョウのデビュー10周年記念作品として書き下ろされたものである。実写映画は2023年に公開された。検察官である寺井啓喜を稲垣吾郎が演じ、特殊な性癖を持つ桐生夏月を新垣結衣が演じた。桐生夏月は他人と関わることを避けていたが、中学時代の同級生だった佐々木佳道と再会し、生きる活力を見出していく。生きる原動力が違う者の人生が交わり、普通に生きるとは何かを考えさせられる群像劇である。

正欲(映画)のレビュー・評価・感想

正欲(映画)
7

改めて多様性を感じることができた作品

なにに満たされるか、何を欲とするかは人それぞれであることは分かっていたつもりでいたが、本当は全然わかっていなかったなと感じました。
今はLGBTなどが注目されていますが、括ることが難しい少数派の欲もこの世にはたくさんあって、受け入れる以前に理解されない欲望に苦しんでいる人々もいるということを思い知らされました。そのような複雑な感情が繊細に描かれていて、とてもひきつけられました。同じような感情を持つもの同士、繋がりを持って支え合えたら良いと思うものの、それも簡単じゃないという現実も表現されており、とても考えさせられる作品だと思います。同時に、その人の中で正しい欲だと思えるものであっても、そのことで他人を傷つける恐れもあり、すべてを受け入れるわけにはいかない難しさも、観る人に訴えかけるような表現がされており、メッセージ性を強く感じる映画だなと思いました。
登場人物全員の様々な感情が特別な機会だけではなく日常生活やなにげない会話など随所であらわされており、2回目を観ても、飽きることなく感情移入ができるのではないかなと思います。
他人をもう少し理解する努力をしようかな、優しい人でありたいなと思える作品です。