水深ゼロメートルから

水深ゼロメートルからのレビュー・評価・感想

水深ゼロメートルから
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青春映画の新時代!

今回紹介する作品「水深ゼロメートルから」は、とにかく「青春」のみずみずしさに溢れている映画である。
それもそのはず、この作品は元々は徳島市立高等学校の演劇部が作り、2019年に開催された第44回四国地区高等演劇研究会で文部科学大臣賞(最優秀賞)に輝いた演劇を映画にリメイクしたものなのだ。
つまり作品の根っこには当時現役の高校生たちが、その時点で抱えていた「高校生特有」の悩みだったり、周囲との葛藤をリアルタイムに反映していて、それが映画からひしひしと伝わってくる。
高校演劇という限られた空間を利用して作られたものがベースということで、この映画もほとんど「水のないプール」という限られた空間で物語が描かれる。
プールの底に積もった砂を掃除せよ命じられた4人の女子高生たちが、掃除をしながら互いに今抱えている悩みなどをぶつけ合う、ただそれだけなのに心を鷲掴みにされてしまうのだ。
しかもこの作品、そこで想いをぶつけ合うことで、彼女たちの抱える悩みが解決するわけではない。
この瞬間だけのことを考えると「意味のない」ことなのかも知れない、でもこうした「意味のない」ことをぶつけ合う、そんな青春が懐かしい。
そして、我々大人は知っている、その「意味のない」と思っていることが、将来「意味」を持つということを。
きっと大人がこの映画の脚本を書けば、どこかしらに「悩みの解決」という要素を入れるに違いない。
でも、この作品は当時の現役高校生たちが作ったからこそ、「解決」しない。
だけど、それが良い味わいを醸し出しているのだ。