おろち(漫画)

おろち(漫画)

『おろち』とは、楳図かずおによる日本の恐怖漫画。『週刊少年サンデー』1969年25号から1970年35号に連載された。不思議な能力を持ち、歳をとることのない謎の美少女「おろち」が、悲壮な運命に翻弄される人々の人生を見つめていくオムニバス形式の作品。単行本は全6巻。2008年には、実写映画化もされた。

おろち(漫画)のレビュー・評価・感想

おろち(漫画)
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サイコホラー漫画の先駆け

『おろち』は、恐怖漫画の第一人者として名高い楳図かずおが、1969年から1970年まで『週刊少年サンデー』に連載した漫画です。単行本は、秋田書店のブランドであるサンデーコミックスにて全6巻刊行。超能力を持つ謎の少女おろちを狂言回しにして、様々な人間の業を描いたストーリーとなっています。

『おろち』執筆以前の楳図かずおは、「へび少女」や「紅グモ」など異形のものの怖さを、独特の絵柄で直接的に表現する作風を得意としていました。同作品ではそのような手法は抑えめになっており、登場人物たちの深層心理の不気味さを丁寧に描き出すことで、ゾッとするような怖さが演出されているのです。『おろち』は9つの中編からなるオムニバス形式になっています。18歳になると醜悪な容姿になる運命を背負った姉妹のドラマを描いた「姉妹」、芸能界の裏側を描きながら復讐劇が展開される「ステージ」、おろちが夫を亡くした女性のために死体を生き返らせようとする「骨」、そして名家に生まれながら優秀な姉と比較されて周囲から疎んじられる妹を中心に様々な人間模様が映し出される「血」など、粒揃いのエピソードが収められています。サイコホラーの先駆けにして傑作といえる『おろち』を、この機会に是非ご一読ください。