ドラマ『フォールアウト』を原作未プレイでもおススメできる理由
ゲームの実写化、そう聞くと私のようなひねくれたファンは視聴を渋ってしまうだろう。ましてや原作の『フォールアウト』は、架空の大規模な核戦争があったアメリカを舞台とした、荒廃した個性的なレトロフューチャーな世界観を描く作品だ。
原作のゲーム、『フォールアウト』を手掛けるべゼスタ・ソフトワークスの作品は、独特で緻密な世界観を丁寧に作り上げることで知られる。そこには練られた設定のアイテムや、企業、組織、アートが多数登場する。
そんな『フォールアウト』の世界観をうまく映像化できるのか。本作はそんな疑問を見事に裏切ってくれた。
以下、あらすじである。
本作では3人の主人公と言えるキャラクターが登場する。Vault33と言われるこの世界では珍しく安全で快適な核シェルターで生まれ育ったが、父親を誘拐されたため、危険な外の世界へ挑むルーシー。
B.O.Sという軍事組織に保護され見習いとして鍛錬を続けるマキシマス。
賞金稼ぎのグール（放射能で変異した元人間）。
それぞれ3人の視点で、時に交じりつつ話が展開していく。
作品の良い点だが、映像やセットのクオリティーは文句なしだった。
どことなく無骨な内装のVault内や、ウェイストランドの荒廃した世界、放射能で変異した気持ちの悪いクリーチャーや、装備すると兵器並みの戦闘力が持てるBOSのパワードスーツ。
これらはすべて原作の細かな設定まで配慮されており、違和感を感じることなくストーリーに没入することができた。
ストーリーに関しては、「ここまで綿密にプロットを作りこんだならもう少しゆっくりした展開でもいいのでは？」
と思わせてくれるほど、テンポよく惜しみなく話が進んでいく。
とくに主人公のうちの1人、グールは最初はただの悪党として描かれるのだが、彼の過去、グールに変異する前の人間の頃まで話が遡り、シリーズを見終わった後では、がらっと印象が変わった。
本作に出てくる企業や組織、アイテムなどにはそれぞれ練られた設定があるのだが、さらりとした演出でゲームをプレイした人に分かるように表現されている点も良かった。
一方で、ゲームをプレイしていない人が視聴した場合は、最初は世界観にかなり戸惑うだろう。
しかし、ストーリーのテンポの良さと、それぞれの主人公についてもっと知りたいというモチベーションで、原作をプレイしていなくてもきっと楽しんでもらえると思う。
唯一気になった点は、少しグロテスクすぎるかなという点だ。
原作では、荒廃した世界のため、非人道的な行為や組織が当たり前の様に存在するのだが、ブラックユーモアや風刺がいたるところに散りばめられているため、コメディーとグロさの奇妙なバランスが保たれている。
だが本作ではとにかくリアルに表現することに拘っているため、若干ゴアな表現が際立ったようにも思う。
結論としては、本作は原作をプレイしていなくても十分おススメできる良作だ。
キャラクター1人ひとりの個性や動機がはっきりしており、話が進むごとにそれぞれの成長を感じ取れる。
もちろん原作をプレイしていれば、粗に気が散るどころか、こんなところまで再現しているのかと驚かされるばかりだ。
ぜひともアマゾンプライムで視聴して頂きたい。