それいけ!アンパンマン 人魚姫のなみだ

それいけ!アンパンマン 人魚姫のなみだのレビュー・評価・感想

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それいけ!アンパンマン 人魚姫のなみだ
8

この塩辛い切なさは幼児に伝わったのだろうか

アンパンマン映画といえば、アンパンマンと仲間たちがゲストキャラと親交を深め、ばいきんまんが作った巨大ロボや強敵をやっつけてハッピーエンドという流れが定型しています。しかし今作では、アンパンマン映画では珍しい恋愛のバッドエンド要素があります。
この映画のゲストキャラである海底のお城に住んでいる人魚のサニー姫は、魔法のヒトデを持ち出してお城を抜け出し、憧れていた地上へ行きます。人間になったサニー姫はアンパンマンたちと出会って仲良くなり、特にしょくぱんまんと親密な関係になります。しかし、ばいきんまんとドキンちゃんが海底のお城に侵入してサニー姫の従者から渦巻きを作るステッキを奪って、お城を乗っ取りました。さらに魔法のヒトデがなくなったせいで、封印されていた海獣が目覚めてしまいます。大暴れする海獣を再び封印するためにサニー姫は魔法のヒトデの力を使いますが、ヒトデの魔力が尽きて、2度と人間になれなくなりました。つまり、しょくぱんまんと地上を歩いて笑いあう恋が、叶わなくなったということになります。終盤でサニー姫としょくぱんまんが夕日に照らされる中、歌う場面があります。歌詞を要約すると「真っ赤な夕日が落ちていく中で、人魚の涙で塩辛い海で、あなたと同じくどうしようもない寂しさを抱えている1人ぼっちな夕日に向かって心の内を叫びなさい」という内容です。生まれた場所と種族が違う2人が結ばれることは決してないことを強調されていて、見ているこちらの胸の中まで、海よりも塩辛くなりました。