ちびっ子にはビターなマジカルホラー
パトロールをしていたアンパンマンが、海上に発生した分厚い雲から、ほうきに乗って飛び出してきた魔法学校の生徒で見習い魔女のリリカと出会います。アンパンマンはリリカをパン工場へ連れて行き、仲間たちに紹介しました。リリカと仲間たちは仲良くなり、今度はリリカがみんなを魔法学校へ連れていくことに。しかし、魔法学校の場所を特定したばいきんまんとドキンちゃんが転校生として侵入し、魔法学校の先生の杖と魔導書とメガネを盗んで学校を悪い魔法で包み込んでしまいました。
この悪い魔法がこの映画のトラウマポイントなのです。
最初にぞっとしたのは、変貌した校舎の外観です。シンプルなヨーロッパの民家風だった魔法学校の校舎が、真っ赤なカタツムリにトゲと禍々しさを足した、禁断の土地のように変貌していました。
校内に入ったアンパンマンたちにも、次々と悪い魔法が襲い掛かってきます。突如強い光を浴びせられたと思ったら、アンパンマンたちの影が不気味に笑って体から離れて、本体をつねって引っ張ったり悪戯をしてきました。この影の笑みが容易く頭から消えないほどショッキングでした。すごい勢いで丸まってくるカーペットも、逃げ遅れたしょくぱんまんを巻き込んで消えてしまったことも相まって、悍ましかったです。
書き手がこの映画を初めて見たときはレンタルDVDで、自宅の小さめなテレビの画面で見ていたから、身震いするほどの恐怖は軽めですみました。しかし、上映当時に映画館の真っ暗な部屋の大スクリーンで見た子供たちの中には、泣き出した子も少なくなかったでしょう。
一方で、ばいきんまんの魔法に敵わないと怖気づいていたリリカが、仲間たちのエールに突き動かされて、ばいきんまんに追い詰められたアンパンマンを魔法で助けました。形勢が逆転したアンパンマンたちは勝利し、魔法学校も元に戻ってハッピーエンドです。勧善懲悪であり、リリカの勇気と成長の感動で観客をスカッとさせるために恐怖の演出をあえて連発したとも考えられます。