怪物(映画)

怪物(映画)のレビュー・評価・感想

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怪物(映画)
10

本当に怪物なのはだれ?

最高に面白い映画!行き交う人間関係の中で全員が全員「怪物」に見えるが、作品が後半に進んでいくなかで登場人物たちの真意がどんどん明かされていき、作品に引き込まれる。

登場人物はみなある視点から見ると怪物的で頭がおかしく、狂った人物のように見えるが、真実を知るとみんなとてつもなく人間的であるため全員に感情移入してしまう。誤解や偏見の行き交う世間の恐ろしさを上手く表現した作品だと思う。

『怪物』というタイトルの印象もあり、鑑賞者は思わず「いったい本当に頭がおかしいのは誰か」と疑いながら見てしまう。だがどんどん登場人物たちの心の真意や背景があらわになっていく中で、世間や人々に理解されずに憤りを抱える登場人物たちの気持ちを感じさせられて、なんとも虚しく切ない気持ちになる。

俳優たちの演技も素晴らしい!怪物に見える側の時には俳優たちからは本当に嫌気がさして恐ろしい雰囲気がするが、そうでない時にはとても人間臭く、応援したくなるような良い印象に変わる。子役たちも思春期の危うい雰囲気や、いたたまれない気持ちをリアルに表現していて、本当に引き込まれる。

坂本龍一による「hibari」という楽曲もぴったりであった。最後に流れた時には登場人物たちの寂しさ、怒り、優しさ、愛などの感情が、「hibari」の洗練されたピアノの音と一緒にどっと押し寄せる。