雪花の虎

雪花の虎のレビュー・評価・感想

雪花の虎
7

おもしろい。ゆえに、最後までじっくり読みたかった。

「あの毘沙門天の化身、上杉謙信が女性だったかもしれない?」そんな仮説を軸に、作者独自の解釈で物語は展開していく。

もちろん、歴史漫画作品というだけあって登場人物や時代背景等の難しい話もたくさん出てくる。だがこの作品には「歴史の知識が全く無い」「難しい話が分からないよ~!」という読者の為に、「アキコのティータイム」というざっくりとした説明や雑談も描かれているので、特に身構える事無く初心者でも簡単に読み進める事が出来るのが魅力的である。
物語の内容も史実に絡めながら、「何故その仮説に至ったのか?」「上杉謙信とはどのような人物なのか?」そして、あの有名な川中島の戦いや武田信玄との関係についても描かれている。
もちろん、あくまで想像上の仮説である。しかしその仮説に至るには様々な理由や根拠がいくつも存在するので、作者そして読者までも「もしかしたらそうだったのかもしれない」と思わせてしまうのだ。

しかし少し残念な所もある。それはかの有名な上杉謙信と武田信玄の一騎打ちがあったとされる「第四次川中島の戦い」をピークに、物語が淡々と進んでしまうのだ。
作者曰く「10巻以内で終わらせる」つもりだったので仕方のない事だが、最終巻である10巻のラスト30ページほどにその後の上杉謙信の生涯が一気に描かれている。
もともと仮説を元に描かれているので、ある意味もう十分「上杉謙信が女性だったかもしれない?」と言われる所以は表現されている。しかしここまで読み進めてしまうと、作者の上杉謙信をもっと読みたいと思ってしまい、すこし物足りなく感じる。