曽我部恵一

曽我部恵一のレビュー・評価・感想

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曽我部恵一
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甘くてメロウな歌声と胸に刺さる歌詞!時代を切り拓く男

耽美な音楽体験を味わいたいあなたへ、自信をもっておすすめしたいのが、曽我部恵一の音楽である。
1971年生まれ。香川県坂出市出身。立教大学在学中より、音楽活動を開始。1992年、サニーデイ・サービス結成。現在に至る。
唯一無二の甘い歌声とその時代のワンシーンを切り取る鮮やかな歌詞、ノイジーかつフォーキーな美しいギター。彼に興味を持ち、初めて聴く作品に迷われた方へおすすめしたいのが、2002年に発売されたソロファーストアルバム「曽我部恵一」である。自身の名前がそのまま作品名になったこの作品は、日常への逸脱性、メロウで幻想的な日常と非日常を繋ぐ境目の世界が歌われている。夏の海辺での風景を思わせる「夏」、昼と夜の境界線が溶けていきそうな「100年後の世界」、2001年9月11日のアメリカ同時多発テロに対して、彼の目線を通して静かで圧倒的破壊力をもって歌われる「ギター」、子供への圧倒的な愛をもって歌われる「おとなになんかならないで」など、ポップなメロディーと生活することから生み出される歌、時代への批評性を併せ持つ唯一無二の世界が繰り広げられている。この作品を気に入って頂けたなら、どの作品も水のようにあなたの身体へと流れ込むであろう。
彼の音楽は、いつも「ひとり」について歌われている。他者との繋がりの前に立ちはだかる、人間はどこまでもひとりであるという現実。そういった個人と個人が如何に繋がりを持ち関係を持っていくか、そういった事へのひとつの回答が彼の音楽にはあると言って良いのではないか。
発売形態は、時代を先導するかたちで、積極的なサブスクリプションとレコード媒体の同時発売など、業界や後進のミュージシャンに与える影響力は多大である。「今」という時代の風を感じたいあなたへ自信をもっておすすめする。