EO イーオー

EO イーオーのレビュー・評価・感想

EO イーオー
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EOの公平な目に惹かれて

EO(イーオー)は、ロバの名前です。2022年公開の、ポーランド出身のイエジー・スコリモフスキ監督の七年ぶりの作品で、今までに類を見ない映像体験は、多くの人々を魅了し、カンヌ国際映画祭の審査員特別グランプリ他数多くの賞を受賞しています。
鮮烈で真っ赤な画面に映し出されたEOの目のアップ。強烈な大音量のサウンドに包まれて、観客は強引にEOの目の中に引き込まれてしまいます。印象的なオープニングに面食らいながら、いつの間にかその不思議な世界の一員として自分が投入されていることに気付くのです。
EOはサーカス団にいて、相棒の女性カサンドラと幸せな人生を全うするはずでした。突然サーカス団を離れることになり、ポーランドからイタリアへと放浪の旅をすることになってしまうEO。カサンドラと過ごした優しい思い出とともに、言葉を持たぬ孤独なロバは、不条理な人間社会と真っ向から対峙していくのです。
何が正しいのか、何が間違っているのか。常識はすべて人間が創り出した幻想でしかありません。日常は、ただ淡々と過ぎ去っていくだけだとEOの目を通して気づき、それは限りなく公平であり、シンプルであることを知るのです。強いメッセージ性を内包しつつ、それを決して観客に押し付けない潔さ。しかしある意味その潔すぎる態度は、万人に受け入れられ難いものであるとも言えます。