部屋においでよ

部屋においでよのレビュー・評価・感想

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部屋においでよ
8

丁寧な心理描写が生きてる作品

大学の写真部に所属している塩村(しおむら)ミキオとピアニストを夢見る水沢文(みずさわあや)は、あるパブで出会い、文の部屋で朝を迎えそのまま同棲を始めます。

同棲を始めたころは仲良く暮らしていますが、文が夢を叶え始めたころからすれ違いが起き、文の成功を素直に喜べないミキオの嫉妬と焦りにより、ふたりの関係が狂い始めます。この二人の関係がこの先どうなるのか、結ばれることはあるのか…その時、それぞれの夢はかなえることができるのか、夢をあきらめ二人の幸せを選ぶのか、とても気になり一気に読んでしまいたくなります。

二人の少しずつ変化する心理描写がト書きを読まなくても表情だけで気持ちが読み取れるように丁寧に描かれています。絵は雑に見えるときもありますが、それが迫力となって読む人の心に響いてきます。

作者は登場人物の気持ちをどのように表現したら読者に伝わるのかを常に考えているようで、登場人物の心理描写が丁寧に描きこまれています。その為、ミキオや文の気持ちに没入できるので、読み終えた後の満足感はとても満たされ、自分が登場人物ににでもなれていたかのような気持ちになれます。

ぜひ読んでほしい作品のひとつです。