有名人販売株式会社

有名人販売株式会社のレビュー・評価・感想

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有名人販売株式会社
9

作られた存在だとしても、愛は美しいものである

主人公の鷲塚与太三郎は大人気アイドルの愛ドール(芸名)に夢中の浪人生である。ある日、彼の家に有名人販売株式会社の商品の、愛ドールそっくりのクローン人間が届いた。しかも、与太三郎を一途に思い続けるインプリンティングのおまけつきだ。しかし、ドールは同姓同名の成金のおっさんの家に届くはずだったのを、名前が同じだったので、主人公の与太三郎の家に間違って届いたのだ。おっさんの与太三郎の豪邸に一度連れていかれたが、隙をついてドールは主人公のもとへ戻った。与太三郎とドールは友人の協力もあって、山奥の旅館へと愛の逃避行をすることになる。二人が辿り着いた山奥の滝のそばには、偶然にも愛ドール本人がいた。男性アイドルとの関係に悩み過ぎた末に、滝に身投げをしてしまった。
物語終盤でクローンのドールは芸能事務所の人間に囚われて、死んだ本人の代わりを強いられてしまう。ドールを失って生きる気力を無くした与太三郎だったが、テレビの歌番組に出ているドールが司会者に「恋人はいるのか」と聞かれ、躊躇わずに元気よく、浪人生の彼氏がいて、ちゃんと大学に入って社会人になったら結婚するつもりでいる、それまで待っていると返答した。テレビの向こうのドールが自分と愛し合ったドールだとわかって、与太三郎は感涙するのであった。

人間のエゴで作られた存在で、一人の人間を思い続けるのはプログラミングされているからと知っていても、身代わりを押し付けられたアイドルの仕事をきちんとこなしつつも、与太三郎をずっと好きでいる一途なドールの愛と心の美しさに感涙した。