科学的に存在しうるクリーチャー娘の観察日誌

科学的に存在しうるクリーチャー娘の観察日誌のレビュー・評価・感想

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科学的に存在しうるクリーチャー娘の観察日誌
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異種族ハーレムと、現代とは異なる技術の可能性をみせてくれる漫画『科学的に存在しうるクリーチャー娘の観察日誌』について

この漫画もいわゆる「なろう系」に分類されるのでしょうか。
現代人が技術の未発展なファンタジー世界に飛ばされ、現代知識や技術でハーレムを築いていく物語。
こういった言い方をすれば正に「なろう系」ではあるのでしょうが、そのジャンルに埋没しない魅力がこの作品にはあります。

生物学科の大学生である主人公、栗結大輔が現代技術や現代知識をベースにした考察により様々な難関を突破し成り上がっていく様。
そしてクリーチャー娘への並々ならぬ愛を現実世界で持て余していた主人公が、多種多様な亜人種やクリーチャー娘を助けていき友好を深め「ハーレム王」として各種勢力を跨ぐ組織を築き上げ、性交までしっかり描写するハーレム展開。わかりやすく爽快で刺激的な面白さがあります。
しかし、それを安易に成し遂げてしまわないための一工夫がこの作品の妙味だと感じます。
「禁忌」と呼ばれる設定です。「火薬」「雷の要素(電気)」「蒸気の水車(蒸気機関)」「燃える水の水車(内燃機関)」といった、なろう系定番の現代技術が封じられているのです。もし使用すれば「モンスタースタンピード」と呼ばれるモンスターによる災害が起き、禁忌を破った者を時には国ごと滅ぼしてしまう。
こうした縛りのために四苦八苦しながら、風力や水力、禁忌に抵触しない方向性の現代工学の知識を駆使し、時には現実世界では実用化されていないが「科学的に存在しうる」発明で、多種族が共存しながらの発展を目指していきます。
人間とは全く異なる構造や性質を持つアラクネや人魚、レッドキャップといった種族の特性に合わせて作られる武器や生活を豊かにするアイテムの数々。
作中やおまけページなどで書かれる詳細な原理の解説には「なるほどなぁ」と思わされます。
また、栗結大輔と同時に世界に飛ばされたもう一人の主人公ともいえる織津江大志は、現代の戦争を前提とした、武器も用いたあらゆる実践武術に通じています。
彼の視点で描かれる物語は、舞台を同じくするもののまた違った切り口からクリーチャー娘であふれる世界を楽しめます。
種族ごとの文化なども非常によく考えこまれた世界を、様々な角度から楽しむことのできるとても充実した内容の作品です。