哭悲/THE SADNESS

哭悲/THE SADNESSのレビュー・評価・感想

哭悲/THE SADNESS
7

血まみれ100分地獄

感染すると、人間を加害を快楽とする化け物へと変貌させるウィルスで侵食された台湾が舞台の、スプラッターホラー映画。
主人公の青年ジュンジョーが仕事へ行く恋人のカイティンを駅まで送って行って、その後入った飲食店は朝からお客さんでにぎわい、店員のお兄さんが鉄板でモーニングメニューを作っていた。この平和な台湾の朝の光景が、ウィルスに感染した老婆の暴力行為が原因で、あっという間に悲鳴と残虐性が広がってゆく惨劇に変わった。
私個人の考察だが、この老婆は腹の部分が血で赤黒くて瞳が極端に真っ黒で、ボロイ服を着ていた。普通でない外観から察するに、老婆は弱みを握られていた、もしくは老婆の人生にかかわる交換条件で、アルヴィンウィルスの人体実験のモルモットにされて、ウィルスで止められなくなった暴力性で研究員を殺して逃げてきた。そして、街中で大暴れしてウィルスをまき散らしたのであろう。

ウィルスに感染すると老若男女問わず暴力性、性欲、食欲が過剰に上がって止められなくなる。公開当時、心斎橋の劇場へと足を運んだ私含む数十人の観客たちが、電車内でも街中でも道端でも病院でも、暴力と流血と強〇にまみれた60分以上の地獄を見ることになったのだ。映画への不満をあげるなら、電車内での大量虐殺を予告編でそっくりそのまんま公開していたから、知っている場面が流れて悍ましさへの新鮮さと満足感が薄くなった気がしたので、もうちょっと残虐性の高い未公開のシーンが欲しかったなあと思う。
ジュンジョーがカイティンを探す中、池の中に浮かんでいたマネキンの首が一瞬本物の生首のように見えたのは、上映中に声をあげてしまうほど怖かったけれども…。今思うとあの場面は、ジュンジョーが感染し始めた兆候だったかもしれない。