N号棟

N号棟

『N号棟』とは、2022年に公開された日本のホラー映画。映画は実際に岐阜県で発生した幽霊団地の事件をもとに、新たな視点で映像化された恐怖体験を描いている。物語は、大学生3人が幽霊が出ると噂される廃団地「N号棟」を訪れ、そこで怪現象に遭遇し、隠された謎を解明しようとする過程を中心に展開される。監督は後藤庸介で、主演は萩原みのりが務めている。
映画のキャッチコピーは「これは夢か、幻か、現実か、それとも…」である。物語の不気味な雰囲気や、出来事が現実と幻想の境界を行き来するような作品である。作品の中には、ポルターガイストに苦しめられる団地の住人たちの様子などが描かれており、観客に恐怖体験を提供している。
撮影のメインは実際の廃団地を数棟を借りて制作された。
公開規模の更なる拡大に向けて配給・宣伝費用の追加調達を図るためにサポーターの緊急募集を行う映画応援プロジェクトとして、クラウドファンディングが行われた。こちらには100万円以上の資金が集まった。

N号棟のレビュー・評価・感想

N号棟
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和製ホラーの新たな挑戦と魅力

『N号棟』は、和製ホラー映画の新しい境地を切り開こうとする意欲作であり、その挑戦的な姿勢と独自のアプローチが光る一作である。
今作において私は、10点満点中4点と、控えめな評価に着地したが、その背後には多くの魅力も存在している。
映画ファンにとっては観る価値が十分にある作品だ。

本作の最大の魅力は、視覚的な美しさと巧妙な音響効果にある。
映像はまるで絵画のように美しく、特に自然の描写や色彩の使い方においては高い完成度を誇る。しかしながらどこかノスタルジックな雰囲気もまとい、観る者の没入感を煽る。
さらに、静と動の音響効果も非常に効果的で、緊張感を高めるサウンドデザインがスリリングな演出にも一役買っている。

テーマ性においても、本作は深い考察を試みている。萩原みのりが演じる”史織”の内面的な恐怖や悲しみに焦点を当てたストーリーは、観客に深い思索を促し、単なるホラー体験を超えた深みを提供している。
心理的な恐怖とメッセージが見事に組み合わさり、ホラー映画としての新たな可能性を示している。

惜しい点もいくつかある。映画内に配置されたシンボリズムの使い方が時に過剰で、わざとらしく感じられる部分があるのは確かだ。
また、「和製ミッドサマー」を意識したプロモーションが実際の内容とは若干のズレがあり、オリジナリティに欠ける部分も見受けられる。マーケティングの意図と実際のストーリーとの乖離が、期待外れに感じられることもあるだろう。

とはいえ、主人公”史織”の精神世界を反映した視覚的な要素とテーマ性の深さは本作の大きな強みであり、ホラー映画の新たな試みとして高く評価できる。映像美や心理的な深みを楽しむことができる人には、1度観る価値がある作品である。

『フェイクドキュメンタリーQ』や『つねにすでに』といった現代型ホラーが人々の注目を集める昨今、作者の意図はともかく、受け手の考察もセットだ。
そうした潮流の中で映画作品としてやりきった『N号棟』は、和製ホラー映画の未来を感じさせる挑戦作であり、その独自の魅力を味わうことで、新たなホラーの楽しみ方を発見できるだろう。