ザ・メニュー / The Menu

ザ・メニュー / The Menuのレビュー・評価・感想

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ザ・メニュー / The Menu
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手間暇かけて提供するシェフの復讐のメニュー

孤島で取れる新鮮な食材で天才シェフが、選ばれた人間たちだけに振る舞う最高の料理による宴の物語…かと思いきや、生涯を掛けて料理人として生きる人生を愛していたのに、仕事でかかわる人間や客の人間性に恵まれなかった天才シェフの復讐劇だった。
食事前の挨拶に、シェフが五感で感じながら料理をお召し上がりくださいと言っていたのに、見事にガン無視して客たちは好き放題ふるまう。料理評論家は仕事モードに入って出されたホタテ料理についてやかましく語りだすわ、シェフのお店のスポンサーの直属の部下だからと給仕長に偉そうにサービスの強要を指図するやつはいるわ、合鍵を返却して一方的な別れ話を食べながら始めるカップルはおるわ、写真撮影ダメなのに早々にルールを破るやつはいるわ。招待客は全員がいい歳をした大人なのにモラルがなさ過ぎた。同レベルに思われたくないから、こいつらとはいっしょに飯食いに行きたくねえなあと本気で思った。
まあ彼らはシェフと彼を狂信している従業員たちに復讐をされるわけだが。
憎いやつを第三者に邪魔されない場所へと誘導し、自分の得意分野でお前のしたこと全部知ってるぞと震え上がらせて、忠誠心を存分に発揮する協力者を集って完全に逃げられなくする。そして、シェフ自身も従業員も客たちも、デザートの焼きマシュマロといっしょにまとめて燃えてすべてを終わらせた。鑑賞後に悲しみのこもった長い溜息をついた。愛していた料理の仕事で自分も人も殺めるまで追い詰められた可哀想なシェフの話だった。