クローバーフィールド/HAKAISHA / Cloverfield

クローバーフィールド/HAKAISHA / Cloverfieldのレビュー・評価・感想

クローバーフィールド/HAKAISHA / Cloverfield
6

誰も助けてくれない怪獣映画

ニューヨークの街に突如として謎の巨大怪獣が来襲した。自由の女神が破壊され、噴煙が立ち込めて街が破壊されるなか、人々は何が起こっているのかわからないまま避難することしか出来ない。この物語では、怪獣をやっつけてくれる大きな力を持ったヒーローは存在しない。怪獣と敵対している別の怪獣も現れない。政府が秘密裏に制作していた巨大生物型兵器も出てこない。人間側の対抗する力は、怪獣にたいしたダメージを与えられない軍隊のみだ。誰も助けてくれない絶望的な状況の中、無力ながらも、崩れた自宅から出られない恋人のベスを助けに向かうロブと、その友人たちの目線をビデオカメラを通して体験できる映像記録風の作品だ。

さらに怪獣は、噛まれるとすぐに体中を駆け巡って、やがて破裂して死んでしまう強力な毒を持った別の小さな個体の怪物を生み出すことができる。この小さい怪物たちは真っ暗闇の地下鉄をロブ一行が歩く中、友人のハッドがビデオカメラの暗視機能を使うまでその存在に気が付かないほど闇に紛れることが得意なのだ。作中にときどき挟まってくる怪獣が来襲する数日前の登場人物たちの平和な日常と会話が、日常の崩壊による悲哀感と絶望を増幅させる。この怪獣は討伐されたのか不明確なまま物語は終了してしまう。普通の人間が、ただただ怪獣たちにやられるがままなので、鑑賞後はとても心が重たくなって嫌な意味で脳裏に残り続けること間違いなしだろう。