せつないね

せつないねのレビュー・評価・感想

せつないね
9

相思相愛の相手がいる男性を好きになってしまった切なさ

少女漫画の恋愛もの。小花美穂の「せつないね」はタイトルのとおり切なく、読んでいると胸が締めつけられてしまいますが、お勧めです。
中学生の千絵は、親が経営するパチンコ店で、駆け落ちした郁子と住み込みで働く恭司に恋をしました。
間近で恋仲の恭司と郁子を見る切なさと、千絵の恭司への純粋な恋心がうまく表現されています。
必死に抑えていた恭司への想いに歯止めが効かなくなった千絵はある日、駆け落ち相手の郁子の自宅に居場所を知らせる密告電話をかけてしまいました。考え足らずの幼稚な行動が、恭司と郁子を傷つけてしまったと同時に、2人の相思相愛を実感した千絵は罪悪感にさいなまれ、謝罪しました。
千絵のささやかで可愛い願い「ファーストキスは恭ちゃんがよかったな」を叶えてあげた場面は、胸キュンしつつ切ないワンシーンでした。

相思相愛のキラキラした恋愛漫画と一味違う「せつないね」は、胸が締めつけられるほどの千絵の切なさに加え、駆け落ちの切なさも含まれた作品です。
交差する登場人物たちの想いや、仕方ないこと、それぞれの関係性、幸せを求めて誰もが模索している姿などがとてもよく描写されています。つい感情移入して読んでしまい、涙なしで読めない漫画を読んでいると、胸が締めつけられるほどの切なさがたまりません。読んだ人によって、ハッピーエンドかどうかの捉え方が異なる物語は、私にぴったりのとてもよい作品です。切ない恋心を忘れてしまった方に、ぜひ読んでもらいたい漫画です。