ただの悪役令嬢ものじゃなかった!
誠実だけがモットーの子爵家の令嬢、コンスタンス・グレイルはハームワース子爵が主催する小宮殿(グラン・メリル=アン)の夜会に参加します。
そこで婚約者のニールが男爵家のパメラと浮気しているところを目撃してしまいます。落ち込むコンスタンスは更にブレンダ・ハリスの髪飾りの窃盗という濡れ衣まで着せられてしまうことに。助けを求めるも誰1人味方をしてくれず、目を逸らされるコンスタンス。絶体絶命の窮地に陥る彼女の元に、10年前処刑された稀代の悪女、スカーレット・カスティエルの亡霊が現れ、コンスタンスに乗り移ります。亡霊が乗り移った彼女は文字通り別人。抜群の記憶力とカリスマ性ある話術でその場を一気に圧倒、髪飾りの窃盗の免罪も容易に晴らしてしまいます。それだけでなく婚約者を奪ったパメラには女性として格の違いを見せつけ、「すべてにおいて負けた」と思わせてしまうほど。小気味良いスカーレットの流れるような逆転劇は一見の価値あり、読んでいて最高にスカッとしました。
第1章では痛快な逆転劇を見せられますが、それ以降は打って変わって貴族社会・ひいては国家の闇を描くクライムサスペンス・ミステリーものに変化していきます。なぜスカーレットは無実の罪で処刑されたのか、裏で糸を引いていたのは誰なのか、題名になっている「エリスの聖杯」とは何を指しているのか…次から次へと2人に降りかかる問題解決のために、スカーレットが指示する内容は凡人コンスタンスや読者には思いつきもしないような内容ばかり。読む手が止まらないとはまさにこのことでした。