最後のレストラン

最後のレストランのレビュー・評価・感想

最後のレストラン
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偉人オムニバスにして成長譚

主人公・園場がオーナーを務めるレストランには、なぜか時空を超えて偉人がやってくる。しかもその偉人は揃いも揃って死ぬ寸前…。
タイトル通り、偉人たちが人生の最後に望む料理を提供していくストーリーです。
まず第一に歴史の勉強になる。構成と考察が非常にしっかりしており、偉人たちの性格や遺した言葉、成した偉業などがうまくストーリーに絡められています。学生時代にこういうマンガに出会えていたら世界史・日本史がより面白くなったことでしょう。
もうひとつの軸となるのは主人公・園場の成長。
主人公らしからず、とことん後ろ向きなダメ人間である園場。店を継いでからわずか1週間で将来を悲観してしまう、筋金入りのネガティブマンです。
そんな彼の武器は料理の腕、そして『園場凌(そのば・しのぐ)』の名前が表す通りの機転。
訪れる偉人たちと交流を重ね、無茶な注文を「その場しのぎ」でクリアしていくうち、経験が自信という名の血肉となってゆきます。第1巻と最終巻では安心感が段違い。
2つの軸をまとめる料理も魅力的で、こちらもまた知識が深まります。こんな料理食べてみたい・あるいは作ってみたい、そう思わせてくれるのに十分な描写となっています。
オムニバス形式ということもあり派手なストーリー展開は少なめですが、堅実で安心して読める内容。オススメです!

最後のレストラン
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あなたは、人生の最後に何を召し上がりますか

面倒な性格をしているオーナー兼シェフの園場凌(そのばしのぐ)は、父親からレストラン「ヘブンズドア」を引き継ぎました。とても悲観的で、ネガティブな凌は、レストランを開店しようとするたびすぐ死のうと大騒ぎします。しかし死ぬこともできず、すぐ仕事から逃げ、うまくいかず悩む日々でした。
凌が不安を漏らしているとレストランの鈴が鳴り、光秀に城に攻められた織田信長が絶体絶命となっている場面に変わりました。織田信長が家臣や妻に聞いた、「ご飯を食べるなら、今何を食べたいか」の答えを聞く前に火が回り、逃げようと扉に手をかけました。すると「ヘブンズドア」に繋がり、凌とアルバイトのスタッフたちが「いらっしゃいませ」と迎えた光景にお互いに驚きます。
全員の体に血がつき、鎧を着た織田信長を名乗る人たちが来た凌たちが警察に通報しますが相手にされません。
南蛮異人のような白装束を着たシェフの凌が、中に入るように促しました。レストランの内装を見て回った織田信長たちは、照明の明るさや宣教師が持っていた時計より精密な時計などに興味を持ちました。
「銭を取り、飯の提供がある」というレストランの珍しい説明を聞き、注文しました。レストランがどんなところか知らない織田信長は、無理難題の注文を言い、シェフの凌を困らせました。
なぜか歴史にとても詳しいアルバイトの前田あたりに当時の時代背景や食生活を教わり、馬鹿でくだらない凌の行動をいつも止める有賀千恵が、凌が作った料理を運びました。料理を食べ、人生で大切なことを思い出した織田信長が、お金の代わりに刀を渡し光の中へ消えました。
その後、歴史上の偉人や有名人が死ぬ直前に「ヘブンズドア」を訪れ、無理難題を言って凌の飯を食べて帰るようになります。

うじうじ悩む現実のシェフに合わせ、多くの歴史上の人物が出てくるところが見所です。
1話ごとにクレオパトラやリンカーンなどの歴史人物が登場する最後のレストランは、時代背景や食べていた食事、死因を前田あたりが説明し、凌が調理します。調理中に人生についてや、後悔などを考え、歴史上の人物が行き詰ったことを基に料理が作られます。
極端に考える凌の悩み事が、毎回料理に隠されています。料理を出した理由として、使った食材の知識を伝え、食べた歴史上の人物が満足します。歴史上の人物が帰ったあと、凌の悩みに対する答えが出ているところが面白かったです。
歴史上の人物に出した料理にヒントを得て凌の周囲で起きた悩み事が解決するところや、美味しそうな料理が見所です。
とても個性が強い「ヘブンズドア」のスタッフが増え、癖になりそうなところも魅力です。