10
桜木紫乃さんを好きになった作品
北海道の貧しい家で生まれた百合江。極貧生活から奉公に出され、旅芸人一座へ。
この物語は、何と言っても宗ちゃんなしには語れません。
ゆっこちゃんとついてきてくれる宗ちゃん。おにぎりを食べる宗ちゃん。
それなのに、「子供が生まれるまでは籍を入れないところが、どうしてだろうなぜだろうと思ったけど、やっぱりね」といった感じでした。
「でも、どうして。どうして、分かっていたなら、最後までこなかったんだろう」と途中で一度、再会できているのに、そこはあっさりしすぎている感もありました。
宗ちゃんとの子供が生きていて、活躍を認識していることが救いです。
宗ちゃんとの子供を身ごもった時に、生家に戻ろうとするところには少し驚きました。
どんなにひどい目にあっても、実家が良いものなのかもしれません。
妹の里実は冷たく知的にうつります。
とくに母親には辛辣です。父親と母親のなれそめには、「字も読めないくせになにが大恋愛よ」と言い、お酒を飲んでしまうことには、「だらしがない人間」とはねのけます。
百合江と里実は対照的に描かれているところがまた、面白いです。里実は非常に現実的というか...プライドが高いんでしょうね。
百合江にはないものが、里実にはあります。
それにしても、宗ちゃんの子供、どうして連れ戻せなかったのでしょうか。