その男、凶暴につき

『その男、凶暴につき』とは、北野武による初監督作品である。1989年8月12日に日本で公開された。配給は松竹富士の配給である。キャッチコピーは「コドモには、見せるな。」だった。
自分の道理に忠実な警察官・我妻諒介は、捜査のためには暴力も辞さない。たとえ容疑者が子供であろうと、家まで押しかけ、力ずくで自首させるような行動を繰り返している。警察署内では彼の行動が問題視されているのだが、先輩刑事の岩城は数少ない我妻の理解者だった。岩城だけは、知的障害がある我妻の妹が退院したことを祝福し、我妻のことを気遣っている。
ある日、麻薬のブローカーが港で殺される事件が起きる。新米刑事の菊地を連れて我妻が捜査をしていると、岩城が売人に麻薬を横流ししているという事実を突き止めてしまう。売人たちと岩城は、我妻の捜査を疎ましく思い、妹を誘拐して人質に取る。狂気の男・我妻は復讐に燃え、死をも覚悟の報復劇が始まる。
本作は元々、深作欣二監督、野沢尚脚本で制作される予定だったが、深作監督のスケジュールが合わず、当時お笑い芸人だけの活躍で知られていたビートたけしがメガホンを取ることになった。撮影中、脚本は北野によってどんどん変更され、野沢尚はクレジットから外してくれと申し出たほどだったという。当時は「お笑い芸人のお遊び」だと揶揄されることもあったが、今では世界中から評価を受ける北野映画のルーツが伺える傑作となった。