WAVES/ウェイブス

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WAVES/ウェイブスのレビュー・評価・感想

WAVES/ウェイブス
10

映像美に心打たれるプレイリストムービー

2020年7月10日に公開されたA24制作による「WAVES」。同映画のストーリーは全体的に暗い雰囲気の中にある。ある日のパーティの夜を境に家族と築き上げてきた当たり前の日常を、そして目の前の大切な人を失ってしまう兄の姿が描かれる前半パート。後半には家族が再び幸せの形になれる様に願いつつも、自身も傷が癒えていない状態の妹。そんな兄と妹の姿を描いた物語である。同映画のスコア音楽には英国のバンド、ナイン・インチ・ネイルズのトレント・レズナー&カッティ・ロスが担当。さらにアメリカの熱狂的なファンに支持されるアーティストの一人、フランク・オーシャンやデビュー後から第一線で活躍するケンドリック・ラマーなど、欧米を代表するアーティストが名を連ねて劇中の挿入歌として使われている。制作会社のA24の特徴として映像美に焦点が置かれることが多いが、同作でも映像美は美しく儚い、それでいてキャラクターの個性一人ひとりの感情の表現が上述の様々なアーティストを比喩的に用いることで、曲が流れた際の劇場の熱気が高まる作品である。また、兄妹のパートが2分割で分けられている映画の構成も少し特殊で興味深い。前半パートは兄が堕落していき家族がバラバラに、後半パートでは妹が自身の傷と共に友人や恋人を通して再生していく希望の物語でもある。躍動する音楽、繊細な映像美は新たな映画体験として記憶に残るだろう。