灼熱の魂

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灼熱の魂のレビュー・評価・感想

灼熱の魂
9

悲劇と愛情

これは、人と人の争いが招いた悲劇である。負の連鎖は一度始まると簡単に止まらないということと、母親はどんな過酷な状況でも子を思う気持ちが生きる源となり、心を踏みつぶされても這い上がる生命力を持っているんだぞと強いメッセージを感じた。しかし、運命は残酷で、悲惨な現実は子供も同じくらい背負う必要があるのだ。この世で一番の怪物は「人間」。繊細な映像と共に戦争などの恐ろしい悲劇を見せつけられることで感情の置き場に困る。きっと、どんな選択をしても、この母親と子供に待ち構えていたのは「バッドエンド」。容赦ない戦争の恐ろしさから逃げるのか、物語だと境界線を張ってのほほんと安全な日常を送るのか、この映画の本質にあえて目を逸らすのか…あなたはどうする?見る人に解釈は委ねられる。負の連鎖を止めた一つの方法が「死んだ母親からの遺言」というのが残酷だ。母親の愛の力は偉大と言いたいのだろうが、悲惨な人生を美談にされているようで複雑。このような酷いものに愛情を消費されたくない。不幸は閉ざされたものの、傷つけられた心の傷は修正されないまま。そう、よく考えると連鎖は「現在進行中」。母親の痛みを生涯抱えて生きて行けていかなければならないのだ。