カスミン

カスミン

『カスミン』とは、2001年から2003年までNHK教育テレビで放送されていたアニメ、及びこれを原作とする漫画作品である。小学4年生の春野カスミが、「ヘナモン」と呼ばれる八百万の妖怪たちと交流するホームドラマ&ファンタジー。初めはヘナモンに戸惑っていたカスミだがすぐに彼らと打ち解け、長らく断絶状態だった人間とヘナモンの懸け橋になりたいと望むようになる。監督は本郷みつる。キャラクター原案は伊藤有壱、キャラクターデザインは馬越嘉彦が担当している。あもい潤、八神千歳によりコミカライズされた。

カスミンのレビュー・評価・感想

カスミン
8

主人公春野カスミ目線で探るヘナモンの正体は「異質」な何かと誰かさんたち

2001年10月から2003年にかけて、今でいうEテレに当たるチャンネルで『カスミン』というアニメがやっていました。
一言でいうと、「妖怪の家に居候をすることになった女の子」が主人公です。作中の妖怪は「ヘナモン」という呼称を持ちます。精霊または付喪神のような存在です。
仕事以外は何もできない両親の下、家事能力や根性を鍛えられたカスミは、手違いで人間界で暮らすヘナモンたちをまとめる霞家に住むこととなります。タイトルにもなっている「カスミン」とは、この家に住む龍王(ヘナモンの王)の息子、龍之介に付けられた物でした。
濡れ雑巾、ポット、デジカメなどが命を持ち、人間と似た姿の霞家の面々は皆超常的な能力を持ちます。当主の仙左右衛門が言うように、ヘナモンと人間は長らく交流を断絶するほどに「異質」な存在なのです。
そこに一石を投じるように、カスミの同居が決まりました。元々は仙左右衛門の勘違いが元なので色々と彼から脅しをかけられるものの追い出されることも霞に変えられる(よく言われる脅し)こともありません。
ここで注目したいのが、ヘナモンが何を表しているか、ということです。異質なものと分かり合えるか、手を取り合えるかとの寓話とも取れますが、カスミはヘナモンと接するようになってから色々と初めての経験をします。
これらの体験が、カスミの目から見たヘナモンという「異質な存在」として描かれているようにも思えます。
第2話で、霞家の娘、蘭子が離婚をし、遊び仲間の風神と雷神を呼び出して出かける描写があります。この二人は暴走族風のいでたちで、到着の際には雷鳴と突風を合図に現れるのです。
風神雷神が現れる直前、カスミは蘭子が強がりながらも本音では離婚のことを引きずっているとみて色々話しかけていました。少し歩み寄ろうとした矢先の風と雷です。恐らくカスミはバイカーというものを意識したのはこれが初めてでしょう。雷のような爆音と、風のように百走るバイクはいつの間にか姿を消します。
第2話のラストでは風神が酔い潰れた蘭子を迎えに来させるため霞家を訪れますが、頑固な仙左右衛門は出ず、カスミが自ら風神のバイクに乗り込みました。ここで風神たちのバイクが人間の使うそれとは「異質」であることが分かります。彼らのバイクは空を飛ぶのです。カスミにとっては初のバイクの同乗。見ようによっては、風のように早く、空を飛んでいる錯覚を覚えたとも取れるでしょう。
カスミ第4話でカスミはヘナモンの子供達を集めたヘナモン保育園で保母さんの代わりをします。子供の世話くらいしっかり者のカスミには簡単、ということもありませんでした。カスミも一応小学生なので「子供」ではありますが、更に幼い子のパワーや発想に負けることは多々あります。実際、ヘナモンの子供たちは能力でカスミをからかいました。幼い子たちも小学生にとっては「異質」と言えるのです。かつて自分が幼かったころのことも忘れるほどに。
他にも奇妙なアイテムが登場し、出来事がたくさん起こりますが、概ねハートフルな物語です。絵もかわいらしいディフォルメ系で、ちょっと「異質」な何かと誰かさんたちを戯画化して描くのには丁度いいのかもしれません。