孤独なヒーローの自らのトラウマをあがなう戦い
主人公・伊達直人は肉体的には強いが、精神的には弱い青年で、子供の頃みなしごだったとか貧しかったとか自らのトラウマをうめきれない。一見、利他的に見える行動も、ひねくれた態度も、実は同じものであって自分のトラウマをうめきれない心理に過ぎない。しかし孤独を好みひねくれた態度を取りながらも社会的弱者を助ける主人公の生き方に共感する人は多いと思う。なぜなら人間は他人には厳しいが自分には甘いものであり、世の中は友情や助け合いのような美しい事ばかりではなく貧困、誤解、差別、いじめ、ねたみといったような醜い事で満ちあふれているからだ。このアニメは一方的な正義のヒーローや万能のヒーローではなく人間としての心の痛みを伴ったヒーローこそが本当のヒーローなのだと語りかけているように思えてならない。最近タイガーマスク運動という社会現象が話題になったが、今から40年以上も前のアニメが世の中に影響を与えている事は驚くべきであり、また逆にこのような人間心理を考えれば当然の事とも言えるであろう。昭和から平成へと時代は変われども貧困、誤解、いじめなど人の世の苦しみは何ら変わらないと言える。なぜならそのような苦しみは科学技術の進歩とは関係なく人間存在の本質に関わる問題だからだ。