ベクシル 2077日本鎖国(2007年公開映画)ネタバレ感想
予告編の「日本ハイテク鎖国」のフレーズに興味を抱き視聴。
作中の日本は世界の市場を独占し大きくリードするほどのハイテク技術を有しており、国連との衝突から鎖国状態にある。
物語はアメリカが「日本が国際協定を無視したロボット研究を行っている」との情報を掴み、特殊部隊を潜入させるところから始まる。
この下地となる設定とアイデアが非常によく、これは面白そうだと期待を膨らませた作品だったが、実際には話の展開に落胆してしまった作品。
しかし2021年以降に視聴すると違った感想になるかもしれない。
理由は「鎖国中日本で何が起きていたのか」を描いたシーンにある。
作中では危険なウイルスが発見され、日本政府は国民にワクチン接種を義務付ける。
しかしこのウイルスはでっち上げの情報であり、ワクチンは人体実験だった…というのが真相である。
ここでコロナウイルスに世界中が衝撃を受け、そこから国民がワクチン接種に至るまでの実際の出来事がチラついてくるのだ。
映画公開当時は非現実的なご都合主義設定としか思わなかったシーンなのに、逆に一番怖いシーンになってしまった。
とはいえ各所に見受けられる設定の矛盾がなくなるわけではなく、また主人公サイド敵サイドともに愛着が湧くでも魅力を感じるでもないのも事実。
悪の組織ポジションである大和重鋼を崩壊させる経緯にしても、え?これで終わり?という呆気なさで、爽快感より拍子抜けという印象。
ちなみにだがワクチンによる人体実験は、人間をアンドロイド化させるというものなので現実世界に恐怖を煽る心配はない。あくまでも連想することが作中のスパイスになる程度である。
良い点と言えば「ハイテク鎖国」という現代日本の得意分野と、歴史上実際に行われた鎖国を組み合わせた設定の下地。からの不法入国することで明かされる国民の悲惨な現状という落差。良い素材を料理人が活かしきれなかった…そんな作品。しかし今後暫くは不謹慎とされ制作には勇気を必要とするであろうシナリオだけに、独特の刺激を得られるのでないかと思う。