無恋愛紳士

無恋愛紳士のレビュー・評価・感想

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無恋愛紳士
9

無恋愛紳士 BL漫画の中の普遍的恋愛

漫画家であり、原作者でもあるARUKUの作品。
この作品はボーイズラブ~BL作品なので、こういう作品に拒否反応を示す人に読んでもらうことはできないのだが、
もし、ただの恋愛漫画として読んでもらうことができたなら、感動の多寡はともかく、心が動くことはあると思える。
主人公は愛にも恋にも関心がなく、むしろ世の中に恋愛というものがあること自体が許せないくらいに思っている男性である。
異性愛でもなく同性愛でもない無性愛者というのだそうだが、そう思って社会の中での生きにくさを感じているのが彼なのである。
そんな彼のもとに転勤で現れた年下の男が彼の人生を揺らしていく。
彼の部下になったその男は最初から彼のことを好きだと言ってはばからない。
その態度に、彼の方は拒否の感情しかわかず、徹底的に拒み続けるのだが、
ある時、その部下とは学生の頃にある因縁が生まれていたことを思い出してしまう。
部下との毎日の関わりの中で、彼の中には次第に変化が生まれていくことになるのだが…。
というあらすじだけをたどると、どこにでも転がっているラブストーリーとさして変わるところがないと思われてしまうかもしれないが、
いちばん大きく違うのは、主人公があることを恐れるあまりに愛することまでも怖くなってしまったということ。
そしてそのことも含めて全体的にはコメディなのに、主人公が愛を知るまでがきちんと描かれていて、読み返してみてもつい感動してしまうというところだ。
作者は決して絵が上手なわけではないが、それを補って余りある情感がある。