犬王(アニメ映画)

犬王(アニメ映画)のレビュー・評価・感想

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犬王(アニメ映画)
8

圧巻のライブ体験

「映像研には手を出すな!」「四畳半神話大系」などを手掛けたことで知られる湯浅政明監督作のアニメーション映画です。タイトルの「犬王」とは、室町時代に活躍した猿楽師の名前。足利義満の推し猿楽師として、世阿弥とともに一世を風靡した犬王の様子が生き生きと描かれています。ラウドなサウンドに乗せられた犬王のパフォーマンスは、さながら現代の音楽フェスのよう。劇中ではたっぷりと時間を割いて犬王の演目を観ることになるので、骨太な会話劇を期待している人にとっては肩透かしをくらうかもしれません。しかし、ライブパフォーマンスとしては圧巻の出来です。声優としてロックバンド「女王蜂」のアヴちゃんが参加し、蒸し暑い京都の地で行われる犬王の猿楽が醸成する世界観を見事に歌い上げています。映画を観ている私たちも京の町衆となって、伝統が形作られる前の能楽を楽しむ感覚を味わえます。「難しい事は考えずにエンタメを楽しみたい!」という日にぴったりの映画です。ストーリーやキャラデザ的な側面ですと、どろろや松本大洋が好きな人にとっては楽しい作品ではないでしょうか。また、「ONE PIECE FILM RED」のような演出が好きな方にもおすすめです。

犬王(アニメ映画)
9

映画なのかミュージカルなのか、とにかく新しいジャンルの映画

室町の京の都を描いているのにもかかわらず、Z世代から支持を集めるアーティスト「女王蜂 アヴちゃん」をキャスティングした、斬新な作品。
ざっくりとした内容としては、北朝は京都を舞台に超個性派猿楽がミュージカル調に表現されており、現代においての「批判を恐れず、個性を貫き通す」といった風潮を見事に表現していた。

「化け物と言われた犬王」と「盲目の琵琶法師」の二人が描く【命が終わるまで】のストーリーに最後まで目が離せない。
他者に自分を受け入れてもらえない悲しみや、自分自身で自分を受け入れることができた時の感情を描きつつも、
後半では「たとえ死にぶち当たろうとも、自分のポリシーを最期まで貫き通す者」と「生きるためならプライドを捨てる者」の相反する二者の激動に目が離せなかった。

全体を通して、何に感動したのかが分からなくなるほど、とにかく「すごい」と衝撃を受けた世界観である。
思わずゾッとするような描写の中、美しい歌声が響き渡った瞬間、心を打たれた方も多いのではないでしょうか。
湯浅監督の世界観や独特な音楽表現に好き嫌いが分かれるのではないかという点を鑑みて、9点という評価にしました。
個人的には10点以上の評価をしたい気持ちです。因みに犬王は実在する人物なのだとか。