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心の変化を色で表現する映画
ベント・ハーメル監督の映画はどれも、色味に特徴があるように思える。
特にこの「1001グラム ハカリしれない愛のこと」は主人公の心の変化が、色によって表現されていると思う。
この変わったタイトルは、「キログラム原器」が題材になっているからなのだが、
このキログラム原器を扱う女性が主人公なだけあって、神経質で真面目な性格であることはなんとなく予想がつく。
やたらと目に飛び込んでくる美しい青。インテリア、洋服、景色の中の青。
うまくいかない彼女の人生を表すように、彼女を取り巻く青色はどれも、寂し気で冷たい。
しかし、人生はキログラムでは測れない。だから面白いのである。
思いもよらない出会いによって、変化するものなのである。
彼女を表すような冷たい青に、違った優しい色をもつ人が混じり合うと、なぜか彼女を取り巻く青色が優しい色に見えてくるのが不思議である。
無表情だった彼女が、性格のまったく違う男性と恋に落ちた時、輝くような笑顔をみせるのである。
人生は、出会う人や出来事によって、常に変化していくものなのだ。
この映画の素晴らしい所は、終始登場する青は、青だということだ。
私が最初にみた青も最後に見た青も同じ青なのに、冷たく感じたり、温かく感じるということだ。
自分の心持によって、色(見え方)が変化しているという事なのだ。
そう思うと、この先出会う人や出来事がちょっと楽しみになりそうなる。
是非、人生に生き辛さを感じている多くの人に観てもらいたい映画である。