母さんがどんなに僕を嫌いでも

母さんがどんなに僕を嫌いでものレビュー・評価・感想

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母さんがどんなに僕を嫌いでも
9

断ち切れない連鎖を抜け出すのは自分次第だ(実写映画の感想)

同名コミックエッセイを実写化したこの映画は、見る者の考えや感情をとても揺さぶられる作品である。
主人公タイジは、幼いころから母親の愛情を十分に注がれずに育った。
大人になって働くようになっても、自己肯定感の低さから周りとは馴染めず、周りにも自分にも期待をせずに、
必要最低限のコミュニケーションで生活をしていた。
そんな中、会社の同僚がタイジを気にかけ、そして自分とは真逆のタイプの男と出会い、彼らに振り回されながらも少しづつ自分の居場所が出来ていく。
しかしいつでも付きまとうのは、母との思い出とその関係だった…。
この映画は見る人にとっては過激な表現もあり、母から罵声を浴びせられる場面は、過激な表現が苦手な方には少し辛い映画かもしれない。
母親役を演じた吉田羊さんの迫真の演技は、終始息をのむものだ。
そしてその息子役の仲野太賀さんの演技も、ドラマなどで多く見る明るいキャラクターとは全然違い、とても胸を打つ。
どんな形であれ両親との関係に苦しみ、自分の生き方が分からなくなった人が、その環境から抜け出せるかどうかは自分次第なんだと勇気をもらえるだろう。
そして全ての人がこの映画のように前向きに生きれるとは限らないが、
その一歩を踏み出すには、周りの理解ある人たちが手を差し伸べるのも大切なんだという事を感じる作品である。