駆込み女と駆出し男

駆込み女と駆出し男のレビュー・評価・感想

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駆込み女と駆出し男
7

映画「駆込み女と駆け出し男」(2015)のテンポの良さと魅力的な登場人物

<作品概要・あらすじ>
江戸時代後期、幕府公認の女性専用縁切寺として有名な東慶寺があった。
助けを求めて駆込む女たちの聞き取り調査をする御用宿に、駆け出し医者&戯作者志望の信次郎(大泉洋)が居候している。
信次郎は聞き取り調査の手伝いをしているうち、男女の愛憎渦巻く様々なトラブルに巻き込まれていってしまう。
奇抜なアイデアと達者なしゃべりで、信次郎はそのトラブルを解決し、ワケあり女たちの再出発を手助けしていくのだが…。
公開:2015年5月16日
監督:原田眞人
原作:井上ひさし「東慶寺花だより」
出演:大泉洋、戸田恵梨香、満島ひかり、樹木希林、堤真一

<レビュー>
この作品を観ていてまず感じるのが、「あぁ、江戸時代って、実際にこんな日常でこんな人々がくらしていたんだろうな」ということだ。
大泉洋演じる「信次郎」が窮地に立たされるたび、得意の口上で逃げ切るのだが、そのセリフのテンポが非常に良くて面白い。
他の演者との掛け合いも、息つく間もなく当時の話し言葉でのセリフが飛び交う。
観る側も、ある程度当時の時代背景がわかっていないと一度では理解できないほどだ。
そのセリフのテンポの良さと、話し言葉が臨場感を感じさせる。
また、戸田恵梨香演じる「じょご」と満島ひかり演じる「お吟」も、それぞれ魅力的だ。
じょごの夫は博打や女遊びが激しく、映画冒頭のじょごは非常に頼りなくおどおどとしている。
しかし御用宿や縁切寺で過ごすうち、みるみる自信を取り戻し、きれいな女性になっていくのだ。
その変化の過程が違和感なく、もともとのじょごの気質と相まって、とても魅力的な女性に生まれ変わっていくのがわかる。
お吟はお歯黒に妖艶な雰囲気だが、縁切寺に来た理由が実に切ない。
愛する男の記憶には自分が一番綺麗な時を残したいという、潔くも儚い姿が涙を誘うのだ。
この映画は、一人一人の登場人物にしっかりと焦点があてられ、笑えて泣けて、最後にはほっこりする映画となっている。
ぜひ、観る側も江戸時代に入り込んだ気持ちで、彼らの生きざまを見届けてほしい。