ガルシアの首

ガルシアの首のレビュー・評価・感想

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ガルシアの首
8

独特のバイオレンス描写で映画を観る者の心を陶酔させる、ペキンパー美学が炸裂した『ガルシアの首』

『ガルシアの首』は1974年に公開されたメキシコ/米国合作のネオウェスタン映画で、監督はサム・ペキンパー、共同脚本はペキンパーとゴードン・ドーソン、原案はペキンパーとコワルスキー。出演はワレン・オーツ、イセラ・ヴェガ、共演はロバート・ウェーバー他。『ビリー・ザ・キッド/21歳の生涯』が商業的に失敗した後であったため、本作はメキシコで低予算で撮影されました。映画の原題は「アルフレド・ガルシアの首を持ってこい」というものです。女誑しの首を巡って血みどろの争いが繰り広げられるという、見るからに一般受けしない題材のため、米国では興行的に惨敗しました。ですがその一方で、監督であるサム・ペキンパー自ら「俺が作りあげた映画」と豪語するほど監督の嗜好が色濃く現れた作品でもあり、ペキンパーの代表作に推す声も少なくありません。この映画は、ペキンパーの十八番ともいえるハイスピードカメラで撮影されたスローモーションや、激しい銃撃戦などの暴力描写が作中でふんだんに用いられています。『戦争のはらわた』と並んでペキンパー自身が最後まで編集権を握ることができた数少ない作品の一つでした。ペキンパーは巧みな編集によってキレのよい銃撃戦を演出しています。ペキンパーが自分のやりたいように作ったこの映画は、もっともペキンパーらしい作品であるとも評されることもあります。当初の商業的な成功はおぼつかなく批評家の評価も惨憺たるものでしたが、後進の監督たちからリスペクトを集め、製作後になって作品としての地位を固めたのでした。わが国では、北野武がフランス人記者のインタビュー本で、ウィリアム・フリードキン『L.A.大捜査線/狼たちの街』と共に、本作を若いころに多く鑑賞した大好きなアクション映画だと語っています 。また、『ガキ帝国』や『黄金を抱いて翔べ』などの監督作品や、テレビや著書での毒舌で知られる井筒和幸はペキンパーを敬愛している監督の一人にあげており、本作『ガルシアの首』も絶賛していることも忘れることができません。