狼よさらば

狼よさらばのレビュー・評価・感想

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狼よさらば
7

犯罪率の高騰した1970年代米国社会の病巣を描き出す『狼よさらば』

『狼よさらば』(原題は”Death Wish”)は、1974年に公開されたアクション劇映画で、1972年に『ブライアン・ガーフィールド』が発表した同名の小説を原作としています。カージーは建築家で、自宅を強盗に襲撃された際に妻を殺され、娘を犯されたために一人自警団になります。本作は『Death Wish』映画シリーズの1作目で、その後8年間にわたって『Death Wish II』ほかの類似作品が製作されます。映画の公開時には「自警主義」(犯罪加害者に私的制裁を加えること)と、際限なく犯罪者を罰することを推奨する点が批判されました。原作小説は自警主義を否定しているにもかかわらず、映画のほうはその考えを支持しているからです。映画は商業的な成功を収め、犯罪率が急増していた1970年代の米国では観客の共感を呼びました。本作の監督であるマイケル・ウィナーは西部劇の著名な監督であるバット・ベティカーの系譜に位置する技巧派の監督であり、ベティカーの暴力描写の孕む寓意を鋭く嗅ぎ取って、表面的には善人そうに見える一般市民が復讐に転じると獣性の虜になりうることを、リアルに描き出しています。