しをちゃんとぼく

しをちゃんとぼくのレビュー・評価・感想

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しをちゃんとぼく
10

優しくグロテスクなほのぼの日常系漫画。世間から逸れてしまう人々への応援歌。

『しをちゃんとぼく』は、世間から逸れてしまう人々への応援歌だ。
まず、主人公のぼくくんとしをちゃんのキャラクター性が良い。
ぼくくんは大人しくて優しいが、その年齢らしくお母さんに反抗してしまうこともある幼い男の子。
そんな普通の男の子の友達であるしをちゃんは、なんと死を失いし者、不死身の不死者なのである。
とはいえ、しをちゃんが最強の魔王様だとか、世界征服をもくろむ極悪人だとか、そういうことは一切ない。
彼はただ死なないだけだ。もっと言うと、不死者として長く生きてきたために頭をぶつけたり腕をなくしたり、どちらかといえばおっちょこちょいなところが多い。
そして、彼は誰に対しても優しい。穏やかに、柔らかに、死を有する者達、ぼくくん達を受け入れてくれるのだ。
しをちゃんの周りには、時代によって多くの人が集まってくる。
彼を世界征服に利用しようとする人、彼を作品として完成させようとする人、彼を処刑しようとする人だっている。
それでも、しをちゃんは彼らを受け入れる。
しをちゃんから見れば短い生を懸命に生きる彼らを、しをちゃんは決して拒絶しない。
世間から疎まれたり嫌われたり苛められたり、そんな「普通になれない」人達の隣に、しをちゃんはいつも寄り添ってくれる。
それはきっと「普通のことじゃない」けれど、しをちゃんの「愛情」のなせる業だ。
しをちゃんはいつの時代も、死を有する私達を愛してくれるのだ。
どうか貴方にも、しをちゃんの愛を確認してほしい。