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ブレイキング・ニュースのレビュー・評価・感想

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8

工夫と遊び心溢れる良作犯罪映画

見終わった率直な感想は、ジョニー・トー監督の映画以外の何物でもない、というものでした。監督がオールジャンルを撮り、かつ驚くほどのアベレージで傑作を連発しているジョニー・トーなので、それだけである程度の面白さは保証されたようなつもりで鑑賞しましたが、予想通りきっちりと面白かったです。警官の不甲斐ない場面が生中継で報道されてしまい、威信を取り戻すべく、警察が白昼の銃撃事件を起こした犯人グループの捜査過程を全て生配信する、という作品のアイデア自体が面白いです。
マンションに籠城した犯人グループもネットを用いて配信を行い、巧妙な心理戦を仕掛け合う過程も面白いですが、警察のトップの女性と犯人グループのリーダーがそのやり取りの中で、互いに内心認め合っていく過程にも引き込まれます。マンションの籠城戦というシンプルな構成でも飽きさせないのは、警察側にも犯人側にもそれぞれ対抗勢力があり、個々に策略を巡らし合うからです。そのような込み入った展開は非常にゲーム性が強く、情念ドロドロだったかつての香港ノワールとは一味違ったドライで軽快な味わいがあります。
偶然鉢合わせてしまった犯罪者たちが、料理や食事を介して交流を深めていく場面も非常に良かったです。食事や調理シーンが素晴らしいのはジョニー・トー映画の大きな特徴の一つで、本作の籠城中の食事シーンもしみじみと良い場面になっています。見終わって改めて振り返ると、アイデアと遊び心に溢れたドライな作風と、食事場面が相変わらず素晴らしいという、紛うことなきジョニー・トー作品だったなという印象でした。素晴らしい映画でした。