カペー弦楽四重奏団

カペー弦楽四重奏団のレビュー・評価・感想

New Review
カペー弦楽四重奏団
10

ベートーヴェンの演奏を得意とした伝説のカルテット

カペー弦楽四重奏団は、20世紀前半に活躍したフランスの弦楽四重奏団です。彼らの演奏は全録音がCD化されているので、容易に聴けます。
その演奏の魅力は何でしょうか。それは、とても優美で古典的な演奏スタイルが醸し出す、究極の美を感じさせるところだと思います。リーダーはリュシアン・カペーで、第1ヴァイオリンを担当していました。彼の優美で繊細な演奏が一番よく分かるのは、ヨーゼフ・ハイドンの「雲雀」の第一楽章冒頭で、第一ヴァイオリンが実に優雅に弾きだすので、聴いていると夢の世界に誘われてしまいます。まさしく雑駁な現実を忘れさせてくれる響きなのです。一度聴いたら忘れられない演奏と言えましょう。
彼らはフランス人ですが、得意としたのはベートーヴェンの弦楽四重奏曲でした。これは全部で5曲レコーディングしています。そのなかでも、とりわけ作品番号131番の演奏は素晴らしいものです。深い精神性を感じさせる演奏となっていて、聴くと心が静かになり落ち着きます。これほどの演奏を聴かせてくれる弦楽四重奏団は他にありません。
彼らは全部でわずか12曲の演奏しか残しませんでしたが、いずれも珠玉の名演です。
ベートーヴェンの弦楽四重奏曲以外の曲ではシューベルトの「死と乙女」、ドビュッシーの弦楽四重奏曲、ラヴェルの弦楽四重奏曲、そして前述した「雲雀」がとりわけ優れています。
「死と乙女」は特に素晴らしいもので、死というものの悲しみを感じさせる鬼気迫る演奏です。
彼らの残したディスクは今後も聴かれ続けることでしょう。