ピーター・ゼルキン

ピーター・ゼルキンのレビュー・評価・感想

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ピーター・ゼルキン
10

2世ピアニストの枠に止まらなかった巨匠

ピーター・ゼルキンは、20世紀を代表するピアニストの1人だったルドルフ・ゼルキンの息子として生まれ、活躍しましたが、惜しくも2020年3月に亡くなりました。
彼の魅力は何でしょうか。それは、父ルドルフが弾かなかった作曲家や曲に積極的に取り組んで、硬質でシャープですが、まろやかな趣きもある演奏を聴かせてくれたことでしょう。
そういった録音には、例えばベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲のソロをピアノで弾いた小澤征爾指揮ニュー・フィルハーモニア・オーケストラとのディスクがあります。
この演奏は本来ヴァイオリンがソロを弾く曲ですから、聴いてみると少しソロに音の弱さのようなものが感じられてしまうのですが、試み自体はとてもユニークで面白いと思います。
他にも様々な録音を残しています。中でも、やはり小澤征爾と組み、シカゴ交響楽団をバックに演奏したバルトークのピアノ協奏曲第1番・第3番などはなかなか優れた演奏です。バルトークの曲ですからピアノが打楽器のように使われているのですが、どこかソフトな雰囲気が感じられ、楽しく聴けます。
ピーター・ゼルキンの演奏は、全体にテンポはゆっくりめで、丁寧に弾いているのがその特徴です。
彼はいわゆる2世ピアニストですが、その枠を取り去っても十二分に通用する優れた音楽性とテクニックを持っていた演奏家でした。こんな彼の演奏を江湖にお薦めいたします。