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『クライ・マッチョ』レビュー:クリント・イーストウッドの老境演技に酔いしれる
本作のキャッチコピーは「イーストウッドの集大成」。これは誇大表現でもなんでもなく、クリント・イーストウッドが手がけてきたフィルモグラフィや彼の人生観すべてが詰まっています。
91歳のカウボーイという役は、彼の出世作ドラマ『ローハイド』を思わせれば、大人と少年の交流というストーリーは『グラン・トリノ』、『センチメンタル・アドベンチャー』と重なります。カウボーイが動物とすぐ打ち解けられるというスキルは、『ダーティーファイター』でオランウータンをパートナーにしていることからも納得できますし、老齢なのにプレイボーイな一面は、前作『運び屋』でも発揮しています。
そもそも、ウエスタンブーツやテンガロンハットを身に着けて馬や車を乗りこなし、女性にモテモテな91歳なんて非現実的。でもイーストウッドが演じると、それは現実になってしまいます。
ケンカに強くて女性にモテるのがマッチョ(男らしさ)ではない。弱さも兼ね揃えていて、それを克服しようとする意志を持ててこそ真のマッチョたりえる。『グラン・トリノ』の時と同様に、イーストウッドからの次世代へのメッセージが込められています。
「イーストウッドの集大成」は誇大表現ではありません。しかし、この作品をもって「集大成」と断言してしまうのは早計かもしれない。
彼には情熱が続く限り、今後も映画を撮り続けていってほしいものです。