恐怖と欲望 / Fear and Desire

恐怖と欲望 / Fear and Desireのレビュー・評価・感想

恐怖と欲望 / Fear and Desire
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天才キューブリックの監督デビュー第1作、記念すべき作品『恐怖と欲望』

『恐怖と欲望』は1953年に公開された米国の反戦映画で、監督・製作・編集はスタンリー・キューブリック、脚本はハワード・サックラーです。製作班はたったの15人で、本作はキューブリックの商業映画デビュー作になりました。映画では特定の戦争を名指ししていませんでしたが、製作と公開は朝鮮戦争の最盛時でした。
『恐怖と欲望』は観客に向かって語りかける俳優デヴィッド・アレンによるナレーションで始まります。「この森で戦争があった。かつて戦われた戦争ではなくて、これからある戦争でもない。ここで戦った敵も、敵と呼ばれない限りは存在しなかった。この森とそこで起こったすべてのできごとは歴史の外側に存在する。恐怖と疑惑と死の変わらぬかたちがわれらの世界に由来する。観客が目にする兵士たちはわれわれの言語を使い、われわれの時代に属するのだがどこの国の兵士でもなく、われわれの心の中にしか存在しない。」
『恐怖と欲望』について映画評論家で脚本家のジェイムズ・アグリーは「この作品を芸術的と呼ぶには多くの素晴らしい点があり過ぎる」とキューブリックの早熟な才能を称えました。コロンビア大学教授マーク・ファン・ドレンはキューブリックに書簡を送って「スタンリー・キューブリックの作品は、出現した瞬間に豊かな才能を見いだしたいと思っている者にとって一見の価値がある」と賞賛しました。