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サイコスリラーと哲学と…溶け合う二重螺旋
この作品はフランソワ・オゾンの第8作目の監督作品です。ジョイス・キャロル・オーツの短編小説を組み込んだこの映画は、小説的な現実と幻想の溶け合う空間を見事に映像化した作品である。
(彼なら筒井康隆の『パプリカ』を実写映画化出来るのでは?!と思わされる程の完成度でした。)
ジャンルはエロティック・スリラー・ドラマ映画とジャンル分けされている。しかし、エロさ以上にこの映画はうちなる自己否定的感情から抜け出そうともがく女性の葛藤が描かれた作品であると私は感じた。
あらすじやストーリーを調べても、同じ職業で同じ顔で同じ声だが正反対の性格を持つ双子の男性の間で揺れる女性の話のようなことが書いてあることが多い。
しかし映画を見てみると、2人の間で揺れるというのは主題では無いと私は感じる。
どちらかと言えば、主人公の女性が自らの幸せな日常を自分の手で壊してしまうという事がメインだと感じた。
エロと言うよりも、その先の生命の誕生という神秘にフォーカスが当たっている。子供という存在を「愛の結晶」という例えがあるが、この映画の主人公は「愛の結晶」でなかったのだ。愛とは優しさだと言う人もいる。しかし時にそれは暴力になりうる。そんな危うさと曖昧さの中でもがく女性の葛藤が描かれた作品だと私は思う。