ディア・エヴァン・ハンセン / Dear Evan Hansen

ディア・エヴァン・ハンセン / Dear Evan Hansenのレビュー・評価・感想

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ディア・エヴァン・ハンセン / Dear Evan Hansen
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孤独な青年の嘘から始まる感動の物語

「Dear Evan Hansen」はスティーブン・チョボスキー監督による2021年公開のミュージカル映画です。同名のミュージカルの映画化作品で「ラ・ラ・ランド」「グレイテスト・ショーマン」の音楽チーム、ベンジ・パセックとジャスティン・ポールが楽曲を担当していることでも話題になりました。
本作の最大の特徴は、ミュージカル映画では珍しくSNSを題材にした現代劇である点です。ミュージカルが苦手、敷居が高いと感じている方にも身近なテーマとして入り込みやすい内容となっています。
社交不安障害を持つ青年、エヴァン・ハンセンはセラピーの一環として自らに宛てた手紙を書いており、これがタイトルにもなっている「Dear Evan Hansen」の由来です。物語は、この手紙を彼と同様に周囲の生徒から孤立している乱暴者の生徒、コナー・マーフィーに見られたことに端を発する出来事から始まりますが、エヴァンがコナーの親に彼との関係を「友人」として語った一つの「嘘」が、コナーの家族や同級生達、SNSを通じて多くの群衆に意図せず広がってしまうことで、その後のエヴァンの運命を大きく変えてしまいます。他人のことを思いやるが故につく悪意のない嘘を「ホワイトライ」と言いますが、本作はエヴァンがついてしまったホワイトライの物語です。
主演のベン・プラットはミュージカル版でも主人公エヴァン役を演じていますが、「Waving Through the Window」「You will be found」といったミュージカル版でも使用された楽曲は彼の歌声ならではの哀愁を感じます。プラットが映画版制作当時27歳でありながら10代を演じるにあたって批判もあったようですが、チョボスキー監督の譲れない思いがあったようです。youtubeの映画トレイラーでも視聴できるので、まずは楽曲だけでも聴いてみることをオススメします。
ミュージカル映画としてイメージする「ウエストサイド・ストーリー」や「グレイテスト・ショーマン」またはディズニー作品のような、華やかさ、派手さはないですが、誰もが感じたことがある若者の孤独、SNSがもたらす陰と陽を表現した傑作です。