楽しさ満開!トロピカル~ジュプリキュア!
プリキュアという作品を語る上で忘れていけないのが「プリキュアらしさ」への「脱却」です。長寿番組ながら定型を良しとせず、作品毎に挑戦的な題材や「こうあるべき」を疑い新たな提案を模索する、変化を運命づけられた作品だと思います。
「トロピカル~ジュ!プリキュア(以下、トロプリ)」は前作「ヒーリングっとプリキュア」が様々な要因によって現実の事象と紐付いてしまい、すっきりしない印象のまま終了してしまったように感じたのとは全く反して、トロプリは作品内でしっかりと完結し納得のいく終わり方をしたと思います。
それは何と言っても主人公・夏海まなつ/キュアサマーが一年間徹頭徹尾ブレずに天真爛漫だった事に尽きるでしょう。それは意地悪な言い方をすれば彼女が「成長していない」とも言えますが、そもそもトロプリの世界観が日本のどこかでありながらまるで「常夏の国」のように朗らかで、無論年中行事もあるにせよそれまで恒例の冬服のお着換えも物語のかなり後方という具合。
過去のプリキュア達に見られた仲間の成長への葛藤もほとんどなく、「今一番大事な事をする」をモットーに他のメンバーや同級生、先輩や家族、そして最終的には敵対する「後まわしの魔女」の使用人たちまでも同調、魔女が自分の望みを叶えて消えた後に破壊の意思を継ぐ執事・バトラーとの決戦においてプリキュアと共闘するシーンはやはり感動的です。
唯一、住む世界が違う人魚のローラに課せられた選択ですら、それまでのまなつたちとの交流から一筋縄では行かないフェイルセーフを幾重にも用意してから記憶を消されているのですから、そこからのまなつとの再会と復活する記憶の流れのシーンのカタルシスはさすがです。