古の雪姫は人魚姫の成長の礎に必要だった？シャロン姫は何の為に蘇り、また消えなければならなかったのか
非常にコメディ色が強い「トロピカル～ジュ！プリキュア」はまるで南国のような温かい地域が舞台のお話で、ストーリーも過去のシリーズに比べて見てもあまりシリアスな方向には寄らず明るい作風に好感が持てます。しかし映画はタイトルにあるように雪に覆われた王国「シャンティア」の女王シャロンに招かれたプリキュア一行が事件に巻き込まれ、シャロンと親しくなった人魚のローラの葛藤と成長を描いた内容となっており、テレビ本編のコメディ的な部分は抑え気味で全体のトーンもやや暗く楽しいお話を期待した層には少々肩透かしに感じるかもしれません。客演の「ハートキャッチプリキュア」もローラとマリン/えりかとの顔芸合戦ぐらいにしか見どころは少なく、こちらも賑やかし以上の存在感には薄かったのが残念でした。途中シャンティアとは数万年前に隕石の落下で滅びた歴史が分かり、その日が戴冠式当日だったシャロンだけは地下に生き残ったものの再び地上に出られた時には全てが亡んだ後という最悪な状況で、落下した隕石から出現した赤い宝石のパワーによって独り生きながらえて来た事実がシャロンから語られ友情が育みつつあったローラ/キュアラメールには彼女を救いたい気持ちと彼女を倒してさらわれた人々を助けたい気持ちとで揺れ動きます。その間他の仲間に特別活躍する場面がある訳でもなく、捕まったハートキャッチ組を解放するのは妖精のくるるんというギャグ扱い。結局シャンティアの復活は叶わぬまま、宝石を破壊されたシャロンは肉体を維持する事が出来なくなり徐々に消えていこうとします。ローラたちは彼女に教えてもらった歌「しあわせのくに」を歌い継ぐことをシャロンに誓い、彼女は消えます。女王候補としてローラに成長を促す意味としては理解出来ますが、他のメンバー（主役のまなつ/キュアサマーでさえ）置いてけぼりのストーリーは首を傾げざるを得ません。シャロン役の俳優が非常に良い演技だっただけにもったいなくかんじます。